2010年
5月
31日
本日、杉岡製材所の楽天市場店がオープンしました。
http://www.rakuten.co.jp/sugiokaseizai/
じつは、西日本新聞『木挽棟梁のモノサシ』の連載を終えた頃、
やってみようと思った一つが、このネット・ショップでした。
それまで、
●木のような重厚長大なものをHPで販売し宅配便で送るなんて…
●割れ、縮み、ねじれ、腐れなど欠点を前提としたプロ同士の取引でないとクレームになる…
●問い合わせなどに自分一人で対応するのは大変そうだ…
などの理由から、検討さえしませんでした。
ではなぜ今回、やってみようと思ったのか。
簡単に言ってしまえば、さんざん苦労して木のことを、
毎週15回にも亘って書いたにもかかわらず、
「木を売って欲しい」という問い合わせがなかったからです。
発行部数85万部の読者がいるのに、なしのつぶてでは凹みます(笑)
記事自体は、いつも読んでますよ、とか、毎回切り抜いてますよ、
とか、それなりに反応があるというのに、なぜだろう…
いかに自分が換金しにくい商品を扱っているのか、
つくづく思い知らされるとともに、私はこう推理しました。
読者の目には、魚河岸かなにかでマグロを一匹単位で売っている、
そんな風に私は映っているのではないだろうか… と。
それらを捌く職人さんがいなければ手に負えないし、
だいいち、マグロが好きったって、一匹全部は食べられない…
マグロを、たくさんの人に味わってもらうには?
たとえば、一人前の刺身に小分けして、
たとえば、マグロステーキ用の切り身にして、
たとえば、ネギトロ用のお徳用パックにして、
それらを直販すればよいではないか。
それと同じ事を、どうして木でやろうとしないのか。
西日本新聞 『木挽棟梁のモノサシ』の14回に、私はこう書きました。
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(抜粋はじめ)
さて、現代の住まいと山の関係はどうでしょうか。
日本の国土の3分の2は山林で、うち4割が人工林。その4割は杉です。
でも、木材自給率はパルプ用材なども含めて20%。
杉やヒノキと縁遠い生活を送っておられる方が大半ですが、
人間も自然界の一員である以上、食と同様に住まいも、
「そこにあるもの」を生かす暮らし方の方が理にかなっているはず。
特に、都市の中にこそ、木や森の癒やしの力が必要とされているのではないでしょうか。
その一方で、私たちの提供する商品のなんと少ないことか。
後世の人々に「住まいは山の縮図」であると分かってもらえるような、
木の使い方の提案が、木に携わる私たちの使命だと思えるのです。
(抜粋終わり)
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使命という言葉は大げさに聞こえるかもしれませんが、
木にはそれほど大きな役割があると、私は信じ込んでいます。
なぜなら…
西日本新聞 『木挽棟梁のモノサシ』最終回(15回)を抜粋します。
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(抜粋はじめ)
3年前に聴いた講演会。
宮崎県木材利用技術センターの有馬孝禮(たかのり)所長が示された、
石油はあと46年など、資源の限界を示した鉱物・化石資源の可採年数表
(資源エネルギー庁、1998年)で、
「鉄鉱石232年」という項目を見たとき、「鉄さえも有限なのか!」と衝撃を受けました。
私は悟りました。
地下資源を次世代に少しでも多く残すためには、
再生産が可能な木材という資源をできるだけ使ったほうが良いことを。
多くの方にとって230年後は、はるか遠い未来でしょうが、
私のような高樹齢の木材を取り扱う者のモノサシでは、それは身近な時間なのです。
(抜粋終わり)
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書くだけ書いといて、何もしないのは無責任というもの。
それに、
1回目の記事には布団にカビが生えるのを予防する木の使い方や
2回目の記事には安価でも長持ちするデッキ材を取り上げたのに、
それらがいくら位で、どこで手に入るのか、まったくフォローしないまま。
そこで、楽天市場店をオープンするに至りました。
商品数も少ないし、フォーマットが決まっていて、
なかなかお伝えしたいことを上手く表現できませんが、
ご覧いただけたら嬉しいです。
最後に。
楽天市場店は、すべて妻がつくってくれました。
「やる」と言いつつ手が廻らない私を見るに見かねて。
感謝してます。ありがとう。
@@@
1回目の記事で書いた、2月にカビの生えた布団↓。

風通しのよいスノコ↓で、材質は桐なのになぜ。

杉の40mmの床板を敷き詰めたら…↓

2010年
5月
26日

このところ、久しぶりに再会する方、新たに知り合う方が増え、
『木挽棟梁のモノサシ』を書くことに至った経緯をよく聞かれます。
これまでもその時々で、何度かブログに書いてきましたが、
一昨年秋に現在のブログへ移行したこともあり、
ご一読いただきたい記事に、なかなかたどり着けないことに気づきました。
そこで本日は、
NPO日本民家再生協会の『民家』誌に寄稿した
『西日本新聞「木挽棟梁のモノサシ」の連載を終えて』
をご紹介すると共に、これまでの経緯がわかるように
ブログ記事をまとめ、リンクしておこうと思います。
(とくに①と②には、目を通して頂けたら嬉しいです。)
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『西日本新聞「木挽棟梁のモノサシ」の連載を終えて』
昨年から今年にかけて、西日本新聞に「木挽棟梁のモノサシ」というタイトルで
一五回にわたり連載記事を寄稿した。
NHKの「明るい農村」が終了して久しい。稲作文化を誇るこの国の農家人口は
今や三%。新聞記事の見出しに「農」の文字があるだけで読み飛ばされる時代に、
今回は「林」がテーマである。林業人口は0.1%に満たない。共感してもらう以前に、
まずは読んでもらえるのか、不安を抱えてのスタートだった。
デスクは佐藤弘氏。一面記事「食卓の向こう側」を七年前に企画、飽食に潜む
「食」の問題を提起し、「農」への関心を誘った。その連載は今や社の看板となり、
各地でムーブメントを巻き起こしている。
そんな氏との出会いは四年前。「林」の切り口は何がよいか訊かれたのが始まり
だった。「食卓の向こう側」の森林版がやりたいのだと言う。
「食」のように誰もが関心を抱いてくれる切り口を、私が持ち合わせるはずもなかった。
今回の連載は、私にとってそれを探る機会であったと思う。
毎週、反応を見ながら手探りで書くことは想像以上に骨が折れたが、思わぬ反響も
いただいた。そして、切り口といえるか定かでないが、糸口をつかんだ気がしている。
どうも、「木のある暮らし」への渇望感が人々の間に潜んでいると思えてならないのだ。
一般に、森林といえば環境への貢献が真っ先にあげられる。一方で、産出される「木」の
良さが語られることは少ない。次なる目標は、一面記事「森林の向こう側」の実現。
「木」を味わうムーブメントを巻き起こしたいと思っている。
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① 「食」と「住」(1) 2007年5月15日付
http://blog.goo.ne.jp/marusugi_2006/e/bd1b5707a6c51c215d73de489d0fc0b8
②「食」と「住」(2) 2007年5月16日付
http://blog.goo.ne.jp/marusugi_2006/e/5f1ea40f80174c75f7cf871c6293ceb7
③木を美味しく食す“レシピ”づくり 2007年7月3日付
http://blog.goo.ne.jp/marusugi_2006/e/d5bb5696a3a9b0e6adfddb92bdfa63b2
④今年(2009)楽しみなこと 2009年1月6日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=56
⑤『木挽棟梁のモノサシ』始まる 2009年11月16日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=304
⑥木挽棟梁のモノサシ(1) 2009年11月24日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=306
⑦2009年を振り返って 2009年12月31日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=310
⑧連載で生まれたもの 2010年3月6日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=313
⑨『木挽棟梁のモノサシ』WEB版 2010年5月13日
https://sugiokatoshikuni.com/?p=344
⑩『木の味覚』を取り戻す 2010年5月19日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=350
⑪『森林の向こう側』コーナーが西日本新聞HP内に開設 2010年5月25日
https://sugiokatoshikuni.com/?p=437
2010年
5月
25日
少し前からお伝えしたくてウズウズしていたお知らせがあります。
西日本新聞のHP内に『森林(もり)の向こう側』コーナーが開設されたのです。
なぜ私が、『木挽棟梁のモノサシ』という連載を行ったのか。
それは、『森林の向こう側』へ繋げるためといっても過言ではありません。
経緯などはまた、改めてブログに書きたいと思いますが、
私は前説。そろそろ真打にご登場願いたいところです。
これからの『森林の向こう側』コーナーに胸が膨らみます。
森林や木にまつわる様々なイベントがどんどん紹介され、
このコーナーが育っていくよう私も貢献したいと思います。
皆様からの情報をお待ちしております。
なほ、関連書籍の書評なども紹介していく予定のようです。
拙文ながら、私が書いた「杉のきた道」(遠山富太郎・著)の書評がアップされています。
お時間がある折にでもご一読いただけたら幸いです。
以下、5月23日(日曜日) 西日本新聞朝刊に掲載された告知文を抜粋します。
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本紙HPに「森林コーナー」
【取材班より】暮らしの視点から医、食、農、環境を一体的に考える
「食卓の向こう側」取材班にとって「山」や「森」はいずれ取り組む重要なテーマ。
その機運を盛り上げようと、本紙・食卓の向こう側ホームページに
「森林(もり)の向こう側」コーナー=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/shoku/shinrin/
=を設けました。
山から木を切り出す費用の方が木材価格より高い現実の中、荒れていく日本の山林。
市民が山に入り、「戦力」として活動する森林ボランティアも増えていますが、
都市住民が国産材で家を建て、マンションの一室に木を使う暮らしをすることもまた、
「都市の森林」をつくる一歩となります。
コーナーでは、植林・下草刈りイベントや、国産材を使った住宅展示会・セミナー、
山の暮らしを楽しむ行事などを紹介。
木に携わる生産者や設計士、工務店、大工さんなど技術を持った方を支援する考えです。
なお、「食卓プラス」コーナーで、
「元気野菜de元気人間」「豊後水道奮闘記」「木挽棟梁(とうりょう)のモノサシ」も公開中です。
=2010/05/23付 西日本新聞朝刊=
2010年
5月
19日

今日は、私のHPのトップページにある「ごあいさつ」文を
リニューアルしました。
現在の、等身大の思いを正直に書いてみました。
ご一読いただけましたら幸いです。
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最近あなたが、美味しいと思った食べ物は何ですか?
その素材は? 調理法は? 誰の手によるものでしたか?
またそれは、どんなシチュエーションだったのでしょうか?
木に携わる私がこんな質問をするには訳があります。
今の木材を取り巻く危機は、「木の味覚障害」に根があると思うからです。
たとえば機能から食物を考えたときはどうでしょう。
1.生命を維持する栄養がバランスよくある
2.お腹をこわさない
3.一年を通し安定して食べられ、飢えることがない
こういったモノサシから評価した場合には、もしかしたら、
「カロリーメイト」のような加工食品が最も優れたモノとなるかもしれません。
でも少なくとも、美味しいと記憶される食べ物になることはないはずです。
ところが木材において、
同様のモノサシが独り歩きしていると、私は危機感を抱いています。
1. 表面に割れがなく、機械測定した強度が印字されている
2. 人工乾燥機で乾かし、含水率が○%以下と表示されている
3. 一年を通し価格が安定している
これらは現在、住宅業界で木材に求められていること。
農林規格(JAS)である木材が、工業製品のように安定した品質であるという証ですから、
木材は使いやすくなるし、クレームも減るし、良いことばかりではないか、
と思う方も多いことでしょう。
でも工業製品のように仕立てる過程で、
木の持つすばらしい特性の多くが失われてしまう、とすればどうでしょう。
「酸味・苦味・甘味・辛味・塩味」という味覚が食べ物にあるように、
木にも、木目・色艶の美しさ、触ったときの温かさ、香り立つ芳香、強度、耐久性
というような味わい方があったはず。
たしかに一枚モノ、一本モノの無垢(むく)の木材は、
割れたり、縮んだり、ねじれたり、腐れたり、虫食い穴があったり…
と、欠点とされる多くの「癖」がありますが、適材適所に使うことで、
強度を増したり、長持ちさせたりする、先人たちの知恵と工夫がありました。
工業製品化された木材は、それら「癖」を除去するために、
素材の持つ「力」を奪ってしまっていると、私は思えてなりません。
もしもあなたに、「よい木って何?」と聞かれたら、
1.樹齢が高く年輪がつまっていて木目(木の模様)が美しい
2.色つや・材質に優れ強度も高く、ねじれのない素姓の良いもの
3.芳香が香り立つ
そんな木材だと、私は答えます。
「木」の素晴らしさは、これだけに留まりません。
私たちに癒しを与えてくれるようなのです。
このとき、「木」に熱を加えないことが重要であるとわかってきました。
『木挽棟梁のモノサシ』11話~インフルエンザ・木のパワーで撃退
『木挽棟梁のモノサシ』12話~癒し・森林に科学的効果
(西日本新聞に寄稿したこの↑記事参照)
ですから私は、「木」に人工的な熱を加えない天然乾燥にこだわっています。
天然乾燥とは、細い木を挟み積み上げて、木に風を当てながら数ヶ月から数年間乾燥させること。
昔から伝統的にやられていることなので目新しいものでなく、地味なために目立ちませんが、
これは、究極であるにもかかわらず皆がやりたがらない乾燥法なのです。
丸太を仕入れて納品できるまでに1~2年かかり、資金の手当てが大変。
広大な敷地が必要で、膨大な在庫を抱えることになる。
割れたり腐ったりする木材の管理は手間のかかる至難の業。
それなのに法律では、天然乾燥材は乾燥材と認められていません。
そのため、公共建築物など大きな木造建造物にも使われず、市場は狭まるばかりです。
やればやるほど、経営環境は厳しくなる・・・ 何度「もうだめだ」と思ったかわかりません。
でも、「癖」を除去するために、素材の持つ「力」を奪ってしまう、
そんな、熱を加える技術は、極力使いたくありません。
なぜなら私は、「木味のよい木」がつくりたいから。
ぜひあなたにも、味わっていただきたいと、願っています。
そして、美味しいと言っていただけたら、最高に幸せです。
『木挽棟梁のモノサシ』9話~乾燥・「ゆっくり」が大事
(木材乾燥については、こちら↑もご参照ください。)
2009年
12月
31日

(福岡県志免町・一心寺本堂の上棟式)
今年も残すところ、あと一日となりました。
この一年を振り返りながら、今思っていることを今日は書き留めようと思います。
印象深いのは、昨年秋より参画した雑誌「もくたろ」が、
祖父の命日に創刊したことでしょう。
単に、木の家の良さをアピールするというのではなく、
木の家とは何か、木の家をつくるという営みとは何か、
といったダイナミックなテーマが、そこには展開されました。
筑後川を上流から下流まで辿りながら、木の流れを俯瞰しつつ、
衣食住の営みを追ったあの取材は、今も鮮明に記憶しています。
でも残念なことに「もくたろ」は、芽生えた直後の3月末、
編集長・入澤美時氏急逝により休刊となってしまいました。
私はこのとき、「編集」というものに改めて強い関心を抱きました。
伝えたいことがあっても、それを伝えるための「方法」を知らなければ…
ちょうどその頃、様々なご縁が重なり、思わぬ行動に導かれました。
松岡正剛氏が校長をつとめるISIS編集学校に入門したのです。
そしてその一月後、西日本新聞『食卓の向こう側』編集委員の
佐藤弘さんよりコラム連載のお話をいただきました。
おそらく、編集学校に入門していなければ、お断りしていたことでしょう。
なにせ、子供のころより国語、とくに作文が大の苦手。
そんな私が、毎週締め切りに追われながら文章を書くことなど、
逃げ出したに違いありません。
11月より、毎週記事を書かせていただくなかで、気づいたことがあります。
それは、何かを伝えるために書いている、なんておこがましいということ。
今はむしろ、自分が伝えたいこととは何なのか、探りまとめる手段として書いています。
とはいえ、辛いものはつらい(笑) 読者の励ましが、今は一番のごちそうかなぁ。
「文章が上手い下手はどうでもよか。要は伝えたいことがあるかどうか。」
佐藤さんは、こう言って励ましてくれますし、
拙文でも原稿を投げ込めば、推敲のプロが手直ししてくれます。
またとない機会ですから、ここが踏ん張りどころ、
木のアピールに取り組みつつ、思考を深めたいと思います。

(一心寺・本堂にて)
ブログ更新をさぼっていたので、最後に、11月の終わりにあった嬉しい出来事を。
福岡県志免町に移転新築される安穏山・一心寺本堂が棟上げされました。
九州の杉のイメージを覆し、安物ではない、杉の使われ方を提案したい、
今回はそんな思いを表現できる、またとない機会をいただきました。
杉の中でも、ヤクノシマという品種で統一し、二か所の山からそろえました。
100年以上の目細な杉の赤身材は、猛々しい表情です。
来春には完成しますので、多くの方に見ていただきたいと思います。
さて、来年はどんな年になるのでしょうか。
経済評論家は、悲観論の方が多いようですね。
私の会社もこの二カ月ほどとても苦戦しています。
来年を楽観視できるような状況にありませんが、
それでも来年は、チャンスだと思いたい。
パラダイム・シフトが起こるとき、
潮目が変わる時期だと感じるのです。
○○してもらえない、と嘆いていてないで、
自分に何ができるのかを考え行動しようと思います。
協働しましょう!