2020年 10月 20日
方丈板倉 斎 の竣工
8月10日、山の日に上棟した「方丈板倉 斎」は、建具工事を一部残し、彼岸中日の9月22日に竣工しました。
知足美加子先生(九州大学大学院芸術工学研究院)からご恵贈いただいた
「拈華微笑(ねんげみしょう)像」を安置し完成を得ました。
この像は2017年九州北部豪雨の後、知足先生とレスキューした130年生のクスノキの流木から彫られています。
押し板は、高良山杉(280年生)です。
英彦山の鬼杉(1200年)と小石原の行者杉(大王杉600年)の葉を、稲穂の染付の花瓶に添えました。
杉葉は今回の台風10号で落枝していたものを9月21日に採取しました。
英彦山の鬼杉 推定樹齢1200年
「方丈板倉 斎」の屋根は杉皮葺きです。
真行草でいうと屋根以外は「真」。屋根だけ「草」にしたときどんな姿になるのか正直不安でした。
しかも、今回やろうとしたのは板の上に葺く現代的な杉皮葺き。真似できる屋根がありませんでした。
茅葺き職人の上村淳さん、大工の池上一則さん、茅葺き屋根の研究者で「斎」の設計者でもある安藤邦廣先生と
話し合い、試行錯誤しながら形になった時は感動しました。
2017.0731
この杉皮は、九州北部豪雨で被災した祖父の育てた山の木から採取したもの、
砂防ダムをつくる際の支障木となり、今年の2月から3月に伐採した木々です。
春分から秋分の間の一時期、伐った直後に山で採取すれば簡単に剥ける杉皮ですが、
今回は斎をつくろうと決めたのが5月末。
伐って3ヶ月経った丸太から採取しなければならず、皮を剥くのが大変でした。
マメで手の皮を何度もむきながら、社員の皆で辛抱強く採取してくれました。
これまで廃棄物のように取り扱っていた杉皮。
それを宝物のように慈しむように、端材のような小さな皮まで丁寧に並べる
茅葺き職人、上村さんの分厚い手には心動かされました。
最後の棟の収まりは、木に竹を接ぎ、さらに竹と竹を接ぐ、という、やってはいけないことの連続。
茅葺き職人さん、大工さん、うちの社員の皆の全員総出で丸一日かかりました。
その日の夕刻、南正面からこの棟を見たときの感動は忘れられません。
斎は四寸勾配屋根なので、GLから見ると杉皮はそれほど目立ちません。
でも、桟積み木材の上にあがって南正面から見るとボーっとしばらく眺めてしまいます。
斎は、生長した杉を使いつくす、という趣旨のもと杉皮葺きにしました。
つま先からてっぺんまで、すべて杉でできた建物です。
完成した今、祖父の育てた杉が、斎の屋根を覆ってくれていることを実感し、とても心強いです。