アーカイブ 2010年5月

2010年 5月 31日

なぜ私は、楽天市場店を開店したのか

本日、杉岡製材所の楽天市場店がオープンしました。
http://www.rakuten.co.jp/sugiokaseizai/
  
じつは、西日本新聞『木挽棟梁のモノサシ』の連載を終えた頃、
やってみようと思った一つが、このネット・ショップでした。
 
それまで、
●木のような重厚長大なものをHPで販売し宅配便で送るなんて…
●割れ、縮み、ねじれ、腐れなど欠点を前提としたプロ同士の取引でないとクレームになる…
●問い合わせなどに自分一人で対応するのは大変そうだ…
などの理由から、検討さえしませんでした。
 
ではなぜ今回、やってみようと思ったのか。
簡単に言ってしまえば、さんざん苦労して木のことを、
毎週15回にも亘って書いたにもかかわらず、
「木を売って欲しい」という問い合わせがなかったからです。
発行部数85万部の読者がいるのに、なしのつぶてでは凹みます(笑)
記事自体は、いつも読んでますよ、とか、毎回切り抜いてますよ、
とか、それなりに反応があるというのに、なぜだろう…
いかに自分が換金しにくい商品を扱っているのか、
つくづく思い知らされるとともに、私はこう推理しました。
 
読者の目には、魚河岸かなにかでマグロを一匹単位で売っている、
そんな風に私は映っているのではないだろうか… と。
それらを捌く職人さんがいなければ手に負えないし、
だいいち、マグロが好きったって、一匹全部は食べられない…
 
マグロを、たくさんの人に味わってもらうには?
たとえば、一人前の刺身に小分けして、
たとえば、マグロステーキ用の切り身にして、
たとえば、ネギトロ用のお徳用パックにして、
それらを直販すればよいではないか。
それと同じ事を、どうして木でやろうとしないのか。
 
西日本新聞 『木挽棟梁のモノサシ』の14回に、私はこう書きました。
 
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(抜粋はじめ)
 さて、現代の住まいと山の関係はどうでしょうか。
日本の国土の3分の2は山林で、うち4割が人工林。その4割は杉です。
でも、木材自給率はパルプ用材なども含めて20%。
杉やヒノキと縁遠い生活を送っておられる方が大半ですが、
人間も自然界の一員である以上、食と同様に住まいも、
「そこにあるもの」を生かす暮らし方の方が理にかなっているはず。
特に、都市の中にこそ、木や森の癒やしの力が必要とされているのではないでしょうか。
 
 その一方で、私たちの提供する商品のなんと少ないことか。
後世の人々に「住まいは山の縮図」であると分かってもらえるような、
木の使い方の提案が、木に携わる私たちの使命だと思えるのです。
(抜粋終わり)
 

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使命という言葉は大げさに聞こえるかもしれませんが、
木にはそれほど大きな役割があると、私は信じ込んでいます。
なぜなら… 
西日本新聞 『木挽棟梁のモノサシ』最終回(15回)を抜粋します。
 
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(抜粋はじめ)
 3年前に聴いた講演会。
宮崎県木材利用技術センターの有馬孝禮(たかのり)所長が示された、
石油はあと46年など、資源の限界を示した鉱物・化石資源の可採年数表
(資源エネルギー庁、1998年)で、
「鉄鉱石232年」という項目を見たとき、「鉄さえも有限なのか!」と衝撃を受けました。
 
 私は悟りました。
地下資源を次世代に少しでも多く残すためには、
再生産が可能な木材という資源をできるだけ使ったほうが良いことを。
多くの方にとって230年後は、はるか遠い未来でしょうが、
私のような高樹齢の木材を取り扱う者のモノサシでは、それは身近な時間なのです。
(抜粋終わり)
 

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書くだけ書いといて、何もしないのは無責任というもの。
それに、
1回目の記事には布団にカビが生えるのを予防する木の使い方や
2回目の記事には安価でも長持ちするデッキ材を取り上げたのに、
それらがいくら位で、どこで手に入るのか、まったくフォローしないまま。
そこで、楽天市場店をオープンするに至りました。
 
商品数も少ないし、フォーマットが決まっていて、
なかなかお伝えしたいことを上手く表現できませんが、
ご覧いただけたら嬉しいです。
 
最後に。
楽天市場店は、すべて妻がつくってくれました。
「やる」と言いつつ手が廻らない私を見るに見かねて。
感謝してます。ありがとう。
 
@@@
 
1回目の記事で書いた、2月にカビの生えた布団↓。 

 
風通しのよいスノコ↓で、材質は桐なのになぜ。

 
杉の40mmの床板を敷き詰めたら…↓ 

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2010年 5月 28日

佐賀 『がばいばぁちゃんの里』(ロケ地)をめぐる旅

カテゴリー イベントのご案内

本文の前に・・・
『「土と木の家」見学会を終えて』の記事に、撮り直した写真をアップしています。
よろしければ、ご覧ください。
https://sugiokatoshikuni.com/?p=407
 
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本日は、明日のイベントのご案内です。
押し迫ったご紹介で恐縮ですが、盛りだくさんの企画です。
参加費も手ごろなので、お時間が許せばご参加くださいませ。
二日間とも晴天のようですし、宵はホタルの乱舞がお迎えします。
 
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5月の九州民家塾のご案内
 
~佐賀のがばいばぁちゃんの里(ロケ地)をめぐる旅~ 
 
◆日時: 5月29日(土) 17:30~(集合16:00)
         30日(日)  9:30~(集合8:45)
      (※29日か30日どちらかでもご参加になれます。)

◆集合場所: 中浅浦公民館(佐賀県鹿島市大字三河内中浅浦) 29日・30日共通
 
5月29日 ◎講演会  17:30~
                 講師 ●李 應喆 氏 (佐賀大学農学部)
                      「韓国の食文化の特徴」   
                     ●染谷 孝 氏 (佐賀大学農学部)
                      「水環境を守れ!」
                      (ヤクルト方式水浄化法のススメ)
 
      ◎ホタル散策 20:00~ 春木橋⇒山の神のお堂
                       ※ だご汁を用意しています。
 
      ◎懇親会 20:30~
 
◆宿泊: 中浅浦公民館・元光寺(曹洞宗)・嘉永3年建築古民家(数名)
 
5月30日 
◎佐賀のがばいばぁちゃんロケ地散策 9:30~


 
◎再生古民家の見学 11:00~

 
◆参加費:29~30日+宿泊 3,500円
       29日のみ      1,500円
       30日のみ       500円

◆主催:NPO日本民家再生協会 九州沖縄地区 

◆お問い合わせ先:当日参加OK。
            (有)夢木香(ゆめきこう) 松尾まで
            携帯:090-8399-7153
            TEL:0954-69-8333 FAX:0954-69-8334
            yumekikou@globe.ocn.ne.jp       

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2010年 5月 26日

『木挽棟梁のモノサシ』連載の経緯


このところ、久しぶりに再会する方、新たに知り合う方が増え、
木挽棟梁のモノサシ』を書くことに至った経緯をよく聞かれます。
これまでもその時々で、何度かブログに書いてきましたが、
一昨年秋に現在のブログへ移行したこともあり、
ご一読いただきたい記事に、なかなかたどり着けないことに気づきました。
 
そこで本日は、
NPO日本民家再生協会の『民家』誌に寄稿した
『西日本新聞「木挽棟梁のモノサシ」の連載を終えて』
をご紹介すると共に、これまでの経緯がわかるように
ブログ記事をまとめ、リンクしておこうと思います。
(とくに①と②には、目を通して頂けたら嬉しいです。)
 
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『西日本新聞「木挽棟梁のモノサシ」の連載を終えて』
 昨年から今年にかけて、西日本新聞に「木挽棟梁のモノサシ」というタイトルで
一五回にわたり連載記事を寄稿した。
 NHKの「明るい農村」が終了して久しい。稲作文化を誇るこの国の農家人口は
今や三%。新聞記事の見出しに「農」の文字があるだけで読み飛ばされる時代に、
今回は「林」がテーマである。林業人口は0.1%に満たない。共感してもらう以前に、
まずは読んでもらえるのか、不安を抱えてのスタートだった。
 
 デスクは佐藤弘氏。一面記事「食卓の向こう側」を七年前に企画、飽食に潜む
「食」の問題を提起し、「農」への関心を誘った。その連載は今や社の看板となり、
各地でムーブメントを巻き起こしている。     
 そんな氏との出会いは四年前。「林」の切り口は何がよいか訊かれたのが始まり
だった。「食卓の向こう側」の森林版がやりたいのだと言う。
「食」のように誰もが関心を抱いてくれる切り口を、私が持ち合わせるはずもなかった。
今回の連載は、私にとってそれを探る機会であったと思う。
 
 毎週、反応を見ながら手探りで書くことは想像以上に骨が折れたが、思わぬ反響も
いただいた。そして、切り口といえるか定かでないが、糸口をつかんだ気がしている。
 どうも、「木のある暮らし」への渇望感が人々の間に潜んでいると思えてならないのだ。
一般に、森林といえば環境への貢献が真っ先にあげられる。一方で、産出される「木」の
良さが語られることは少ない。次なる目標は、一面記事「森林の向こう側」の実現。
 「木」を味わうムーブメントを巻き起こしたいと思っている。
 

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① 「食」と「住」(1) 2007年5月15日付
http://blog.goo.ne.jp/marusugi_2006/e/bd1b5707a6c51c215d73de489d0fc0b8
 
②「食」と「住」(2) 2007年5月16日付
http://blog.goo.ne.jp/marusugi_2006/e/5f1ea40f80174c75f7cf871c6293ceb7
 
③木を美味しく食す“レシピ”づくり 2007年7月3日付
http://blog.goo.ne.jp/marusugi_2006/e/d5bb5696a3a9b0e6adfddb92bdfa63b2
 
④今年(2009)楽しみなこと 2009年1月6日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=56
 
⑤『木挽棟梁のモノサシ』始まる 2009年11月16日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=304
 
⑥木挽棟梁のモノサシ(1) 2009年11月24日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=306
 
⑦2009年を振り返って 2009年12月31日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=310
 
⑧連載で生まれたもの 2010年3月6日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=313
 
⑨『木挽棟梁のモノサシ』WEB版 2010年5月13日
https://sugiokatoshikuni.com/?p=344
 
⑩『木の味覚』を取り戻す 2010年5月19日付
https://sugiokatoshikuni.com/?p=350
 
⑪『森林の向こう側』コーナーが西日本新聞HP内に開設 2010年5月25日
https://sugiokatoshikuni.com/?p=437

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2010年 5月 25日

『森林の向こう側』コーナーが西日本新聞HP内に開設

少し前からお伝えしたくてウズウズしていたお知らせがあります。
西日本新聞のHP内に『森林(もり)の向こう側』コーナーが開設されたのです。
 
なぜ私が、『木挽棟梁のモノサシ』という連載を行ったのか。
それは、『森林の向こう側』へ繋げるためといっても過言ではありません。
経緯などはまた、改めてブログに書きたいと思いますが、
私は前説。そろそろ真打にご登場願いたいところです。
 
これからの『森林の向こう側』コーナーに胸が膨らみます。
森林や木にまつわる様々なイベントがどんどん紹介され、
このコーナーが育っていくよう私も貢献したいと思います。
皆様からの情報をお待ちしております。
 
なほ、関連書籍の書評なども紹介していく予定のようです。
拙文ながら、私が書いた「杉のきた道」(遠山富太郎・著)の書評がアップされています。
お時間がある折にでもご一読いただけたら幸いです。
 
以下、5月23日(日曜日) 西日本新聞朝刊に掲載された告知文を抜粋します。
 
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本紙HPに「森林コーナー」 
【取材班より】暮らしの視点から医、食、農、環境を一体的に考える
「食卓の向こう側」取材班にとって「山」や「森」はいずれ取り組む重要なテーマ。
その機運を盛り上げようと、本紙・食卓の向こう側ホームページに
「森林(もり)の向こう側」コーナー=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/shoku/shinrin/
=を設けました。

 山から木を切り出す費用の方が木材価格より高い現実の中、荒れていく日本の山林。
市民が山に入り、「戦力」として活動する森林ボランティアも増えていますが、
都市住民が国産材で家を建て、マンションの一室に木を使う暮らしをすることもまた、
「都市の森林」をつくる一歩となります。
 コーナーでは、植林・下草刈りイベントや、国産材を使った住宅展示会・セミナー、
山の暮らしを楽しむ行事などを紹介。
木に携わる生産者や設計士、工務店、大工さんなど技術を持った方を支援する考えです。

 なお、「食卓プラス」コーナーで、
「元気野菜de元気人間」「豊後水道奮闘記」「木挽棟梁(とうりょう)のモノサシ」も公開中です。

=2010/05/23付 西日本新聞朝刊=

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2010年 5月 24日

「土と木の家」完成見学会を終えて


 
(5月27日。写真を変更しました。)
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5月22~23日の二日間で開催した「土と木の家」完成見学会が無事終了しました。
二日目であった昨日は、生憎の雨模様でしたが、それでも前日同様に
50組余り100名を超える方々におこしいただき、
延べ100組200名以上の方に足を運んでいただきました。
交通の便の悪い中、本当にありがとうございました。
礼を失したことも多々あったと存じますが、何卒ご容赦くださいませ。
 
今日は、そのときいただいたアンケートの中から、
嬉しいコメントの一部をご紹介したいと思います。
 
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◎木の香りがとても気持ちよかった。
◎お風呂場や台所など水廻りにも木が使われていて使い勝手もよさそうでした。
◎明るくて清々しい森の中にいる様な気持ちになりました。
◎新聞を読んでいたけれど、今回はじめて生で体験し興奮しました。
◎子供がハイハイしたら気持ちよさそう。
◎本当にしっかりしていて、住みやすい家とはどういうものか参考になった。
◎現在マンション暮らしですが、木の家に住むという豊かさをとても感じました。
◎どこまでも繊細な感じで仕上げてあり、大変感動しました。
◎建具・壁どれもあまりに美しくびっくりしました。
 
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新築の住宅見学会は、これからも協働者の枠を広げつつ
進めていこうと考えていますが、
民家の再生や、木を使ったマンションのリフォームなど、
今後は、いろんな事例を紹介するべく企画してみようと思います。
ただ、モデルハウスではなく、あくまでプライベートな空間ですから、
受け入れる側も、訪問される側も、お互いの心遣いが必要だと思います。
今後はそんな工夫が必要だなぁと反省させられました。
ご参加の皆様、そして、お力添えい頂いたお施主様、
本当にありがとうございました。
 
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以下、写真で少しだけご紹介したいと思います。
(良い写真が撮れておらず恐縮です。)
 

外観
 

玄関。作りつけの下駄箱の天板は松。
 

玄関ホールは、茶室でよく使われる掛け込み天井。(杉の赤柾) 
 

和室へとつづく廊下。奥様の趣味、茶事にもつかえる畳敷き。
 

二間続きの和室。座敷は茶室の基本である黒縁、次の間は縁なしの減農薬イグサ畳。
 

トップライトがあり、電気を付けなくても明るいリビング。
 

ダイニング。斜め天井の天井板は30ミリの杉の厚板。
 

タモ材で作成した、オリジナルの台所廻り。
 

洗面所は床・壁・天井すべてヒノキ張り。家具はタモ材のオリジナル。
 

風呂の壁・天井はヒノキ板張り。

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2010年 5月 22日

「土と木の家」見学会 一日目

カテゴリー イベントのご案内


(この家の味わい方を話している悠山想の宮本さん)
 
本日(5月22日)、「土と木の家」完成見学会の1日目が終了しました。
来場者は50組を超え、延べ100名ほどの方に
土と木の家の心地よさを味わっていただきました。
降水確立が夕方に近づくにつれ高くなるからか、
午前中に集中し、11時からの1回目講話の際には
40名を超える方がいらっしゃいました。
少し窮屈な思いをさせてしまったこと、ご容赦ください。
 
事前問い合わせでは、明日も同じくらいのお申し込みをいただいています。
明日は雨模様のようですから、おこしになるのは大変だとは思いますが、
見方を変えれば、ジメジメとした雨の日の、室内の快適さを体感する良い機会だとも思います。
足元が悪いようですので、お気をつけておこしくださいませ。
  

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2010年 5月 19日

「木の味覚」を取り戻す


今日は、私のHPのトップページにある「ごあいさつ」文を
リニューアルしました。
現在の、等身大の思いを正直に書いてみました。
ご一読いただけましたら幸いです。
 
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 最近あなたが、美味しいと思った食べ物は何ですか?
その素材は? 調理法は? 誰の手によるものでしたか?
またそれは、どんなシチュエーションだったのでしょうか?
 
 木に携わる私がこんな質問をするには訳があります。
今の木材を取り巻く危機は、「木の味覚障害」に根があると思うからです。
 
たとえば機能から食物を考えたときはどうでしょう。
1.生命を維持する栄養がバランスよくある
2.お腹をこわさない
3.一年を通し安定して食べられ、飢えることがない
 
 こういったモノサシから評価した場合には、もしかしたら、
「カロリーメイト」のような加工食品が最も優れたモノとなるかもしれません。
でも少なくとも、美味しいと記憶される食べ物になることはないはずです。
 
ところが木材において、
同様のモノサシが独り歩きしていると、私は危機感を抱いています。
 
1. 表面に割れがなく、機械測定した強度が印字されている
2. 人工乾燥機で乾かし、含水率が○%以下と表示されている
3. 一年を通し価格が安定している
 
 これらは現在、住宅業界で木材に求められていること。
農林規格(JAS)である木材が、工業製品のように安定した品質であるという証ですから、
木材は使いやすくなるし、クレームも減るし、良いことばかりではないか、
と思う方も多いことでしょう。
 
 でも工業製品のように仕立てる過程で、
木の持つすばらしい特性の多くが失われてしまう、とすればどうでしょう。 
 「酸味・苦味・甘味・辛味・塩味」という味覚が食べ物にあるように、
木にも、木目・色艶の美しさ、触ったときの温かさ、香り立つ芳香、強度、耐久性
というような味わい方があったはず。
  
 たしかに一枚モノ、一本モノの無垢(むく)の木材は、
割れたり、縮んだり、ねじれたり、腐れたり、虫食い穴があったり…
と、欠点とされる多くの「癖」がありますが、適材適所に使うことで、
強度を増したり、長持ちさせたりする、先人たちの知恵と工夫がありました。
 
 工業製品化された木材は、それら「癖」を除去するために、
素材の持つ「力」を奪ってしまっていると、私は思えてなりません。
  
 もしもあなたに、「よい木って何?」と聞かれたら、
 
1.樹齢が高く年輪がつまっていて木目(木の模様)が美しい
2.色つや・材質に優れ強度も高く、ねじれのない素姓の良いもの
3.芳香が香り立つ 
 
そんな木材だと、私は答えます。
 
 「木」の素晴らしさは、これだけに留まりません。
私たちに癒しを与えてくれるようなのです。
このとき、「木」に熱を加えないことが重要であるとわかってきました。
 
『木挽棟梁のモノサシ』11話~インフルエンザ・木のパワーで撃退
『木挽棟梁のモノサシ』12話~癒し・森林に科学的効果
(西日本新聞に寄稿したこの↑記事参照)
  
ですから私は、「木」に人工的な熱を加えない天然乾燥にこだわっています。
 
 天然乾燥とは、細い木を挟み積み上げて、木に風を当てながら数ヶ月から数年間乾燥させること。
昔から伝統的にやられていることなので目新しいものでなく、地味なために目立ちませんが、
これは、究極であるにもかかわらず皆がやりたがらない乾燥法なのです。
  
 丸太を仕入れて納品できるまでに1~2年かかり、資金の手当てが大変。
広大な敷地が必要で、膨大な在庫を抱えることになる。
割れたり腐ったりする木材の管理は手間のかかる至難の業。
 
 それなのに法律では、天然乾燥材は乾燥材と認められていません。
そのため、公共建築物など大きな木造建造物にも使われず、市場は狭まるばかりです。
やればやるほど、経営環境は厳しくなる・・・ 何度「もうだめだ」と思ったかわかりません。

 でも、「癖」を除去するために、素材の持つ「力」を奪ってしまう、
そんな、熱を加える技術は、極力使いたくありません。
 
なぜなら私は、「木味のよい木」がつくりたいから。
  
ぜひあなたにも、味わっていただきたいと、願っています。
そして、美味しいと言っていただけたら、最高に幸せです。
 
 
『木挽棟梁のモノサシ』9話~乾燥・「ゆっくり」が大事
(木材乾燥については、こちら↑もご参照ください。)
 

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2010年 5月 13日

『木挽棟梁のモノサシ』WEB版

カテゴリー 木挽棟梁のモノサシ

cimg6681.JPG
 
ようやく、このお知らせができ嬉しいです。ついに、
『木挽棟梁のモノサシ』がweb上で読めるようになりました!

【掲載ページは、西日本新聞・「食卓の向こう側プラス」↓】
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/lifestyle/shoku/plus/
 
一応、このページからも、それぞれの記事にリンクをはっておこうと思います。
  
①『適材適所』~木の魅力伝えます

②『ウッドデッキ』~水に強い赤身材を

③『建築材』~ピンも杉、キリも杉

④『役割』~木の力を引き出す

⑤『住まい』~家族変えた一軒家

⑥『材齢』~樹齢以上に長持ち

⑦『耐火性』~木は鉄よりも強し

⑧『地震』~伝統構法は残った

⑨『乾燥』~「ゆっくり」が大事

⑩『家づくり』~成熟した木でこそ

⑪『インフルエンザ』~木のパワーで撃退

⑫『癒やし』~森林に科学的効果

⑬『品種』~杉は「育ちより氏」

⑭『古民家』~「山の縮図」だった

⑮『継承』~山の姿に思いはせ
 
こうして一覧にするとたったの15行にすぎませんが、
このために準備を含めると凡そ半年を費やしたのです。
今更ながら、感慨深いものがあります(笑)
 
文字数が約1,100文字と限られているので、
毎回1/3~1/5に刈り込まなくてはなりませんでした。
それで、記事にはできなかった「こぼれ話」がけっこうあります。
そんなテーマも今後、ぼちぼち書いていこうと思います。
よろしくお願いいたします。

cimg7544.JPG
(宮崎県・速日の峰 2010-05-04)

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2010年 5月 06日

「夫婦ふたりの小さな家」完成見学会

カテゴリー イベントのご案内

yuzansoukai.jpg
 
今日は、住宅完成見学会のご案内です。
***********************
 
「木のすばらしさ」をどう伝えよう…
  
コラムや講演会など、機会を頂くたびに悩まされる主題です。
そして結局は、『脳』へのアプローチにすぎないではないか、
と行き詰ってしまいます。
所詮、理解してもらおう、わかりやすくしよう…と
目や耳に訴える手段ばかり模索しているのです。
 
私の経験からすると、
野菜の美味さを思い知るのは、
畠で旬の野菜をかじったとき。
 
つまり、「すばらしさ」がわかるのは
『体』で感じたときではないでしょうか。
 
さて、
5月の22(土)~23(日)の二日間、
協働者の宮本繁雄さん〈(有)建築工房悠山想〉が施工した
「夫婦ふたりの小さな家」の住宅完成見学会が開催されます。
福岡市近郊の住宅地に建つ「土と木の家」。
 
宮本さんのつくる家の住まい手は
「空気がいいんです」
とみな口を揃えます。
 
つくるキャパの問題で、悠山想の見学会は年に数回。
今回も建て主様の温かいお力添えで叶いました。
ぜひあなたも、この機会に体感されてはいかがでしょうか。
そして、「木のすばらしさ」を味わっていただきたいと願います。
 
(私も二日間、現地に足を運ぶ予定です。)
 
なほ、
プライバシーの問題から、
受け付けされた方にだけ、ご案内なさるそうです。
詳細は以下、悠山想さんからの案内をご覧いただき
お申し込みくださいませ。
 
************************
 
「夫婦ふたりの小さな家」見学会のご案内
 
日時:5月22~23日(10時~17時)
場所:福岡県太宰府市
ミニ講話:11時~と14時~の2回(30分ほど)
      「この家の味わい方」宮本繁雄(設計者)
 
木挽き棟梁の杉岡さんが製材した杉材を用い、
職人の手仕事による土と木の家の見学会を、福岡県太宰府市で開催します。
日程は5月22,23日、10時~17時です。
両日とも11時~と14時~の2回(30分ほど)、
設計者・宮本より「この家の味わい方」と題しミニ講話をいたします。
 
—-(宮本より)—————————-
定年を迎え、二人暮らしの終の棲家として計画されました。
木造平屋の小さな家です。
定年になったらお茶を楽しもう、わしは書道じゃと、
趣味を楽しみ、二人の暮らしを楽しむ住まいです。
 
内外共に土壁下地、仕上げに福岡県産の土を使った玄関、和室。
吹抜けの登り梁と漆喰塗りの表情がモダンなリビング。
キッチンをはじめとした木で作った造り付け家具など、
見どころ満載です。
——————————————
 
お問い合わせは…
(有)建築工房 悠山想(ゆうざんそう)
電話:0946(21)5076、FAX:0946(21)5077
e-mail: yuuzansou@h2.dion.ne.jp まで。

*****************************
受付は終了いたしました。
当日、おこしの方は、大宰府の3号線沿いの
中村家具太宰府店」を目指しておこしください。
そこからは、杉岡までお電話頂ければご案内いたします。
(講話中や接客中は、電話に出られませんので、悪しからずご了承ください。)
**********************************
このイベントは、たくさんの方におこいただき終了いたしました。
ありがとうございました。

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2010年 5月 01日

「木挽棟梁トークショー」への一言

4月24日、無事に『木挽棟梁トークショー』を終えることが出来ました。
会場は満員で、よいお客様にお集まりいただいたと感謝しております。
 
新聞で告知して頂いた4月4日(日)から当日までの3週間、
申し込みをいただかない日はなかったのでは、と思うほど、
日々たくさんの方からご連絡をいただきました。
FAXやメールには心温まるお言葉が多数あり、
感動の日々でした。本当に有難うございます。
 
本日は、この日お集まりいただいた方にお願いしました
アンケートへの一言をご紹介したいと思います。
木が好きだったり、関心を持っておられる方々の思い…
本当に勇気付けられます。
アンケートのご協力誠にありがとうございました!
 
★木材関係の方々、木の家づくりをされている方々、
 ぜひともご一読くださいませ。^^
 
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・木の良さは何となく知っていましたが、より明確になりました。(60代・男性)
 
・新聞を読んできました。本物の家について感動しました。(60代・男性)
 
・森と人類の文化・文明史について強い関心があります。(70代・男性)
 
・新聞のコラムで杉岡さんを知りもっと学びたかった。(50代・男性)
 
・杉岡さん意外と若くて自然を大切にされていてたのもしいです。(50代・女性)
 
・都心に小さくても本格的木造住宅を考え中。
 百年単位になるので後に住んでくれる人がいれば。(50代・女性)
 
・前屈の謎がわかってスッキリしました。神がかり的な力もあるのですね。
 まだ、イロイロな木の不思議を知りたくなりました。(20代・女性)
 
・できるなら、木を使った伝統工法で家を建てたいと考えるが、
 実際の住み心地や耐久性や費用等々勉強になった。(60代・男性) 
 
・同じような思いをもっている人はもっと多くいると思う。
 この様な会を数多く催していただくと、大きな「うねり」になると思う。(60代・男性)
 
・木自体に興味があった。暖か味が好き。(50代・男性)
 
・木の家が欲しくなった。(40代・男性)
 
・木材と身体の関係、無意識の中の木の文化がそこに住む人の体にそなわっていることが、
 大変興味深く感じました。第二部と合わせて事例の説明もあり大変よく理解できました。(20代・男性)
 
・木の特質(赤白、ネジレ等)が興味深かった。味のある司会進行も良かった。(50代・男性)
 
・自分の家も自然のもので作りたいのはもちろん、
 日本の山が荒れてゆく社会のシステムに危機を覚えている。
 家づくりのヒントや共感、情報を得たくて参加しました。(40代・女性)
 
・○○でも、今、一件の材木屋さんが閉店に追い込まれました。
 大工さんが減り、材木店が減り、山の木はどうなるのかと心配します。
 体力があれば、山を育てる仕事や百姓をしていたと思います。(40代・女性)
 
・木の家を将来建てたいと思っている私たちにとって、今日はとても勉強になりました。(40代・ご夫婦)
 
・先人の知恵と技術を駆使して建てられた家が姿を消していくことが残念で、
 なんとか建築当時のまま保存できないか、というのが願いです。
 その土地に合ったその土地の木で家を造る方向に日本が動いていくといいなぁと思います。(60代・女性)
 
・祖父そして父の意志を継いで頑張っている杉岡さんに感動を覚えました。(60代・男性)
 
・同じ志を持つものとして今日はトークショーを聞きにきました。(50代・男性)
 
・木と健康、はじめから本当に目からウロコでした。(70代・女性)
 
・一戸建てを買って17年になりますが、家を建てる前にこんなお話を聞きたかったです。
 九州の杉の木で家を建て直したいです。
 もう年齢的に無理でしょうから、リフォームする時にたっぷり杉を使いたい… 
 そんな気持ちになりました。(50代・女性)
 
・自然素材を使った家造りをしていきたい。(50代・男性)
 
・住宅設計従事者として、現状にもどかしさを感じています。
 こういう話を聞く場が増えてほしいものです。(30代・女性)
 
・西日本新聞の話がおもしろく、又、いつかは木の家を建てたいという夢がありますので
 今回のセミナーの話はとても勉強になりました。(30代・女性)
 
・新聞を読んで絶対お聞きしたいと思い参加しました。
 すばらしい実践です。お金はすべてではありませんよね。(50代・女性)
 
・家が古くなっているので改築or新築を考えたい。(50代・男性)
 
・木の特性を生かした家づくり、エネルギー使用の工夫など
 とてもわかりやすい説明で勉強になり楽しかったです。
 木の持つ力の凄さに改めて感じ入りました。もっと木に触れ合いたいです。(30代・女性)
 
・自分の家は杉の木で建てた。人にもこの様な家を建ててもらいたいと思うので、
 そのような家の普及をしてもらいたい。(60代・男性)
 
・老後をいかに気持ちよく生きるか。現在コンクリートプレハブ住宅に住んでいる為、木にあこがれた。(60代・男性)
 
・実家の古民家再生のヒントを得ることと、自分の仕事の参考にしたいとうかがいました。(50代・女性)
 
・古民家再生で市中の山居のイメージで家造りを検討しています。(60代・女性)
  

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