アーカイブ 2013年11月

2013年 11月 28日

だから木造はダメなんだ。


「だから木造はダメなんだ」
この言葉を耳にしてひと月以上なるが、今も残響している。
 
発言者は*腰原幹雄氏。
(*東京大学生産技術研究所教授/NPO法人team Timberize代表理事)
10月19日の松江市で開催された建築士会全国大会、
『木造フォーラム』のパネルディスカッションがその舞台だった。
パネラー其々の自己紹介が、私、香川県六車工務店の六車氏、みえ木造塾の中西氏と続き、
出雲大社式年遷宮の棟梁、後藤史樹氏へと一巡した。
それを受けての予定調和でない一言。しびれた。
 
「木造建築の人は熱すぎる。
 木を好きな人が木の家を建てるだけでいいのですか?」
 
そう仰るあなたも熱いではないか、とつっこみたくなった。
が、なるほど、茶道の嗜みのない私が茶室建築に抱く敷居の高さ、
それと同様のものが木造になじみない人にはあるのかもしれない。
 
「木でつくれないと思っていたもの、木でつくることをあきらめたものが、
 もしも木でつくれるとしたら、街はどのように変わるのか?
 近代以降、鉄やコンクリート、プラスチックに置き換えられてしまったが、
 2000年の建築基準法改正により、木造建築でも耐火建築が建設可能になった。
 「木」は新しい材料として、今もう一度、建築の主役に躍り出ようとしている」

腰原節はつづく。

「もう少し軽い気持ちで木が使えるようにすべき。
 簡単ですよとまずは誘い込む。
 難しいことに挑む人はそれから探せばいい」
 
うなずきながら聞いていたが、一方で抵抗する気持ちも芽生えた。
木にはやってはいけないことがあるからだ。
以前、欠陥住宅の調査の際、
築3年の木造の構造躯体3分の1が腐朽しているのを目の当たりにしたことがある。
設計者の雨仕舞のミスが原因だった。
鉄筋コンクリート造より長持ち可能な木造も、間違った使い方をすればあっけない。
木材が腐朽するというリスクをリアルに想像できないのは、
おそらく、幼少時からの環境に原因があるからではないだろうか。
 
「小さい頃の遊びの質の変化から、職人の質の劣化が始まっている」
後藤棟梁は警鐘を鳴らす。
出雲大社の遷宮工事は、前回より仕事量は少ないにも関わらず、
人工数は膨らんだという。
職人が道具を使いこなせないからであるらしい。
素材と道具は一対の関係にある。
結局、腰原氏も後藤棟梁も危惧する根っこは同じだ。
このままでは「木」が生かされなくなるということ。
「木に触れる場」を増やさなくてはならない。
  
ではなぜ、木に触れたほうがいいのか?
先日、有馬孝禮先生から頂いたメールにそのヒントをみつけた。
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私が最近よく使う言葉は「木を使うと人の行動が変わる」ということです。
行動するには考える、
「考える」に必要なことは「考えようとする力」が必要です。
かって「生きる力」が話題になりましたが
その根本は「考えようとする力」に行きつきます。
木材がその起爆力になるはずでしょう、
五感に訴えるものが備わっているのですから。
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結論。
木に触れるのは、幼いほど、早いほど良い。
「だから木造はスキなんだ!」 
そんな人を猛烈に増やしたい。
  

左から、六車誠二氏、腰原幹雄氏、私。
(三人同い歳であることが判明。松江市スナック「杉」前にて)

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2013年 11月 15日

住まいのモノサシ⑭ 杉の床板~遮音性には工夫必要

カテゴリー 住まいのモノサシ

結露やカビに悩まされるマンションには杉の床板が最適。
先月、なぜそうなのか書きましたが、一般的にならないのには訳があります。
音の問題です。どうすればマンションに無垢の杉板を安心して張れるか。
答えは本文をご覧ください。

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