2009年 4月 02日

「もくたろ」編集長 入澤美時氏逝く。

img_01.jpg
一昨日(3月31日火曜日)の夕方、信じられない電話が入りました。
先日ご紹介した季刊誌「もくたろ」の編集長である入澤美時さんが急逝されたというのです。
しばらく言葉が出ませんでした。食道癌で闘病中であるとは伺っていましたが、
一週間前に電話でお話ししたばかりだったのですから。
 
「もくたろ」の創刊が3月12日。
その19日後、緊急入院して3日目の3月31日、永眠。
創刊にあたって書かれた、
『もくたろ』創刊と「板倉の住まい」
が絶筆なのかもしれません。
 
この二日間、長考しています。
入澤さんの死を私の中にどう意味付けすればよいか、
そこに意図せざるメッセージがあるのではないか、
入澤さんが書いた文章をいろいろと読みながら
今、頭の中の棚卸をしています。
 
いつまで続くかわからない命。
日一日を生き切り、
編集という仕事に魂を込める。
命と引き替えた「もくたろ」に
氏は何を託したのだろうか。
 
昨年12月、筑後川特集の取材の後、こんな手紙をいただきました。
  
「杉岡様 
 先日は、お身体を壊していたにもかかわらず、
本当に、本当に、ありがとうございました。
 筑後川の取材は、これも本当に楽しい取材でした。
お手数をおかけしました。
 田籠、新川を含め、杉岡さんの関わる周辺・空間には、
日本における新たな「地域というものの胎動」を感じました。
可能性を感じました。それは、これから当方がやらねば
ならない課題とまさに、重なっています。
 
 たまたま、10月の末に、そのことを正面に据えた本を
出版しました。一冊、お送りしますので、ぜひお読みください。
 今後とも、共同・協働してさまざまな展開をしていきたいと
思っております。
 
二〇〇八年一二月二二日
                   入澤美時 」

 
そして、”そのことを正面に据えた本”
東北からの思考」(入澤美時・森繁哉 共著)が同封されていました。
 
明後日、告別式に参ります。
行き帰りの道中は、同著を再度、精読するつもりでいます。
入澤さんから突き付けられた「やらねばならない課題」をこれから
いろんな方と共同・協働し、さまざまな展開をしていきたいと思います。
 
入澤さん、短くも深いお付き合いでしたね。
本当にありがとうございました。
合掌 
 
   
最後に・・・
昨日、入澤さんの遺言ともいえる文章がWEB上にあることを知りました。
http://www.slownet.ne.jp/sns/area/life/reading/interview/200902010942-9275541.html
私のブログを読んでくださるのというも何かのご縁。
お時間があるときにでも、ぜひ一度読んでいただきたいと願います。

コメント(15)

コメント(15) “「もくたろ」編集長 入澤美時氏逝く。”

  1. 落合邦子on 2009年4月02日 at 19:17:11

    もくたろを送っていいただき、杉岡さんの活動に関心をむけていたところでしたので、私も少なからずショックです。

    彼の思いを杉岡さんなりに整理してこれからに生かしていけるといいですね。

    私の友人、小橋暢之さんという方がいて、都会から房総に住み移っています。

    スローフード、スローライフなどのこと、彼から私はいろいろと教えてもらいました。

    杉岡さんのこともお話したことがあります。
    入澤さんが御存命でしたら、一度おひき合わせしたかったです。

  2. 奥山暁子on 2009年4月03日 at 5:49:47

    入澤さんのロングインタビューを読み、
    身体を使った複合的な農のくらしが、いかに心楽しく心地いいものだったか。
    わたしのなかにあった記憶が鮮明によみがえりました。

    現在の地方と都市とは、文化的・経済的・思想的に乖離していますが、
    その「接ぎ木」になりたいとおっしゃっていた方が、これからという時に亡くなられたとは、
    とても残念です。

    わたしたちに託された使命とはなんでしょう。
    著書を読んでみたいと思います。

  3. ゆきむらon 2009年4月04日 at 11:27:59

    はじめまして。
    板倉に魅せられ、いつの日か(いや一日でも早く・・・)親の植えてくれた木を使い、我が家を板倉で造りたいと考えるものです。

    板倉を検索し、こちらにたどり着きました。

    先日「もくたろ」の紹介をこちらで発見し、しかもその特集が板倉でしたので、こんな本読みたかった!と思っていたところでしたので迷わず購入し、その中にあふれる板倉に羨望のまなざしで読み終えました。
    これはしばらくはお宝にして、せめて本を眺めて毎日いい気分で過ごしたいと思っているところでした。
    だから、これを創ってくれた方々に感謝の気持ちでいっぱいで、第2、第3の板倉特集をと期待していた矢先、今日こちらに飛んできてその報を聞き、本当に残念です。。。

  4. adminon 2009年4月04日 at 19:16:09

    落合様
    あたたかい言葉をありがとうございます。
    今、入澤さんの告別式およびお別れの会を終え、羽田空港にいます。
    入澤企画は今後もひきつづき「もくたろ」を発刊するよう動かれています。
    応援の程、よろしくお願いいたします。
    ご友人の小橋さんは、どんなお仕事をなさっておられますか?
    落合さんがそう仰る方ですので、ぜひお会いしてみたいですね。^^

  5. adminon 2009年4月04日 at 19:33:01

    奥山さま
    いつもありがとうございます。
    また、早速ロングインタビューまで読んでいただき重ねありがとうございます。
    奥山さんは、関東から四国の農村(漁村?)に移住されるという経験があると
    仰っていましたね。景観がきれいだとか、田舎の人は朴訥であたたかい、
    といったイメージとはかけ離れた、生活の厳しさをお感じになったと思います。
    入澤さんは、「東北からの思考」の47~48頁こう述べています。

    「この風景を眺めて、森さんがいわれたように、僕らは単純に美しいなあとか、
    懐かしいなあとかいってしまいます。(中略)
     ですから、風景の中でそれぞれが生きているということは、私たちがいうような
    単純な姿ではない。
     確かに、現実の大変さとか、生活の中に入っていったらドロドロしているとか、
    それは都市・都会のなかにだってあることですけれど、ただ私たちが見失って
    はいけないのは、こういう風景が美しいとか懐かしいとかホッとするとか、
    「原」風景ということをどうしてもいいたくなるということ自体なんです。
    それは、大切ことだなって、そういう言葉を失った瞬間に根っこを失うというか、
    ダメなんですよ。都市・都会を考えるときにだって、それを見失っちゃダメなんです。」

    深い。
    すごいカウンターパンチだと思いました。

  6. たにむらon 2009年4月04日 at 22:45:50

    もくたろを拝見して、「いつかは、木の家を」と思っていました。
    本当に残念です。

    >入澤企画は今後もひきつづき「もくたろ」を発刊するよう動かれています。
    次号も楽しみにしています。

  7. 落合邦子on 2009年4月04日 at 23:41:47

    http://denen-note.jp/kawazu/index.html

  8. 落合邦子on 2009年4月04日 at 23:45:52

    上記のアドレス、小橋暢之氏の一面です。
    ご参考までに。

  9. adminon 2009年4月05日 at 14:29:39

    落合様
    小橋暢之氏のHP、少しだけ拝見しました。
    開いた途端、以下の問題提起がありました。

    「心の豊かさ、自然、田舎、故郷の安らぎを求める時代が来ている。
    私達が希求する「ふるさと」とは何であり、何であったか、
    これからの「ふるさと」は如何なるミッションをもつのか、考える。」

    昨夜奥山さんに返信したコメントとシンクロしていて、
    なんだかうれしくなりました。^^

    それから・・・杉の文化研究所として(笑)
    徳富蘆花の「別れの一本杉」のことも少し調べていたので
    これまたシンクロ。時間があるときじっくり拝読しようと思います。

  10. adminon 2009年4月05日 at 15:09:06

    ゆきむらさま
    はじめまして。コメントありがとうございます。
    HP拝見させていただきました。
    『もくたろ』のご購入、ご紹介心より感謝します。
    また板倉構法のファンと知りとても励まされました。
    これからもよろしくお願いいたします。

    創刊二号の『もくたろ』は、民家再生を特集タイトルとして、
    現在制作がすすめられているようです。入澤さんが関わった最後の
    取材も、この民家再生のための安曇野での撮影であったようでうす。
    昨日の告別式では、引き続き『もくたろ』、『つくる陶磁郎』、
    そして地域・地方を元気にするさまざなプロジェクトに取り組んでいく、
    とのご挨拶がありました。
    これからも応援の程よろしくお願いいたします。

  11. adminon 2009年4月05日 at 15:13:02

    たにむらさま、
    ありがとうございます。
    「木の家」ぜひ実現させましょうよ!
    だんなさまの花粉症のためにも。^^
    一昨日、深山さんとショコリンさんが
    杉の葉エキスをつくってみると仰ってました。

  12. コトウダon 2009年4月06日 at 3:22:06

    入澤さんのご冥福をお祈りします。
    入澤さんの遺志は、皆さんに受け継がれていくのでしょうね。

  13. adminon 2009年4月06日 at 8:54:28

    コトウダさん
    ありがとうございます。
    くしくも、コトウダさんのブログに昨日紹介された
    ランディ・パウシュの言葉に集約されます。

    Brick walls are there for a reason:
    they let us prove how badly we want things.

    壁がそこにあるのには、わけがある。

    我々がどれだけ本気か証明するためだ。

         Randy Pausch

  14. 林浩太郎on 2009年4月07日 at 9:14:24

    入澤さんのご冥福をお祈り申し上げます。

    杉岡さんの心中をお察しします。

    偶然かもしれませんが、私の実家も柿生です。
    添付のURLを拝見して、同じ土地で育った方であることを思うと
    不思議な感覚に包まれます。

    記事の通り、ポツンと取り残された感じの駅であるものの
    未だ、自然が必死にその姿を残そうとするメッセージのようなものを
    感じ取ることのできる土地です。

    大切なものを大切に感じることのできる心。

    それを次世代に伝えていくことが私たちの使命かもしれません。

  15. adminon 2009年4月07日 at 10:26:19

    林さん、
    ご実家が柿生ですか。

    今回、柿生についていろんなことをお伺いしました。
    柿生の地名の由来である空海と禅寺丸柿の話、
    区の名称を決める際、麻生と柿生で競り合い、
    柿生の方が投票数が多かったにもかかわらず
    麻生になってしまった経緯。
    柿生という地名は、駅や学校にのみ残っている、
    由緒ある月読神社がある、などなど。

    現在、入澤さんととても縁の深い柿生在住の方が、
    板倉構法で美容院を建てておられます。
    名前は「美容室 柿生の家」と決まっているそうです。
    6月頃のオープンになるのではないでしょうか。

コメントを残す

CAPTCHA