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2009年 6月 04日

「水資源」により経済大国となりえた日本

カテゴリー 杉の文化研究所

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『農協の大罪』(山下一仁・著)という本を読みました。
「農協=自民党=農水省」の護送船団を延命させることと引き換えに
食料自給率は下がり続けていると、元農林官僚である著者は警鐘を鳴らします。
この本をどう解釈するかは、立場によって様々あろうかと思います。
(参考:池田信夫ブログでの書評↓)
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/b30f7850017c6e196746fd3208515adf
  
それでも今回この本をご紹介しようと思ったのは、読んで気づかされたことがあったからです。
本の主旨とはずれてしまいますが(笑)、本日はそのことをシェアしたいと思います。
 
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子供のころ学校で、日本は「資源の乏しい国」だと教わりました。
多くの方もそのような先入観を抱いておられることと思います。
確かに日本は、石油や鉱物資源などを輸入して、鉄・自動車・電気製品などを造っています。
しかし、どうしてこれらの資源が豊富なアラブ諸国やオーストラリアなどでは、
充分に工業が発展しないのでしょうか。
 
理由は、「水」という資源が乏しいからだ、と著者は断言します。
 
(本著より引用します。)
 
「部屋を汚すと、雑巾に水を含ませて拭き取る。工業の原理も同じである。

鉄鋼石をエネルギーによって熱し、鉄の板に加工するが、その後の処理に水が必要となる。

つまり、水は工業生産によって生じた廃物、廃熱を拭き取る役割を果たしており、

水なくして工業は成立しない。」
 
(引用終わり。)
 
なるほど・・・と思いました。
教育や人材など、いろんな見方あるでしょうが、この切り口は新鮮に感じました。
そして引用文に続く次の言葉が脳裏に残響しています(笑)
 
「わが国は「水」というきわめて重要な資源を持つ「資源大国」なのである。
 また、それゆえ経済大国となりえたのである。」
 
 
日本の年間平均降水量は1700ミリ、世界平均の2倍もあり、世界第3位です。
ところが雨水のままでは、水は流れてしまうだけで利用できません。
季節により降水量に偏りがありますし、川の流れが急であるためです。
明治時代、治水工事の指導で来日したオランダ人ゲレーケは日本の川を見て
「これは滝だ」と叫んだといいます。
 
そこで、雨水を蓄え蒸発させることなく供給する仕組みが必要となります。
幸いにも日本にはそれが備わっていました。それこそが、
先祖代々継承してきた、第二の資源である「森林」と「水田」なのです。
言い換えるならば、次の言葉となります。(本著より引用。)
  
「急峻な地形にも関わらず、大きな洪水を起こさないようにしているのも
 森林と水田の巨大な緑の「ダム」としての働きがあるからだ。」
 
これまで、森林や水田の貯水機能について、幾度となく聞いたり読んだりしてきました。
しかしながら本著にあったこの一文は、私にとって発見的でありました。
(くどいようですがもう一度、笑)
 
「わが国は「水」というきわめて重要な資源を持つ「資源大国」なのである。
 また、それゆえ経済大国となりえたのである。」
  
それこそが学ぶということだ。
これまでもずっと知っていたことが、
突然新しく見える。

            ドリス・レッシング

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