2009年 1月 10日
「木」に抱く畏敬の念。
この木は杉の木。長さは8mあります。樹齢は150年ほど。
こんなに長くて太い曲った木をどこに使うのかと疑問を抱く方も多いことでしょう。
今回は、お寺の本堂の隅木(屋根材の一部)というところに使います。
木の上にまたがった少年は、この木の行き先となるお寺のご子息です。
一昨日、ご住職、建築家の先生とご一緒に製材の立ち会いにおこしいただきました。
この仕事に携わりながら、常々感じていることですが・・・
「木」の時に抱く感じ方と、「木材」になったときの感じ方はなぜこうも違うのでしょうか。
この幅広い板は、破風板(はふいた)といって屋根の妻側に使われます。
見えにくいかもしれませんが、黒い線で書かれたところが最終的な形です。
両端の白い部分を避け、中央の赤いところだけで取れるようにしています。
これは、雨が掛ったり日に当たっても傷みにくくするための工夫です。
しかも、お寺の屋根はとても反っていますので、曲がりを考慮すると
実際に使用されている幅からは想像もつかない広さの板が必要なのです。
たとえばこの板は6m50㎝。
木の元に近い広いところで80センチ、反対側の狭いところでも60センチあります。
破風板の実寸は正味5m。一番広い部分で42センチ。狭いところは24センチです。
さらに屋根の上の方に使われのですから小さく見えます。
結局、建てられてしまってからでは、これほどの迫力を感じることはまずないでしょう。
したがって有難みも薄くなるのではないかと思うのです。
山に立っているとき、手を合わせたり抱きつきたくなるような木を使うということを、
せっかくならば、そのまま受け止め、感謝したいと思うのです。
この日の夜に、ご住職からいただいたメールの中にこんな一文がありました。
『帰宅しまして、息子と風呂に入りながら、「今日の製材所はどうやった?」と聞きますと、
「すごかった。大きかった。あんな大きい木が新しい本堂に来るっちゃね。」
とうれしげに返答。連れて行ってよかったと心から思いました。』
本当にありがたいことです。合掌
大きな木ですね~・・・
東京では中々みることができないですからね。。
とても新鮮です(^^
今年も、杉のすごさを全国の方々に伝えていきましょう!!(ノ≧▽≦)ノ(笑)
取次さんどうも!
今回は良いめぐり合わせで、準備していた原木で必要な材料を
うまくとることができました。
(写真を見ていただくと色が良くて 節がないのがおわかりかと。^^)
丸太の段階で吟味していますが、
いざ鋸を入れてみるまで中身はわかりませんので
節が出てはならない長くて大きい材を製材するときは、
なんとも言えない緊張感があります。
お客様におこしいただいて、「これでとります」と目の前で製材し、
まったく使えないような代物がとれたら、一気に信頼を失ってしまいます(笑)
古い木には、中に釘や針金などが入っていたり、
鉄砲の弾が入っていたりなど、思いがけない欠点が出たりもします。
冷静を装っていますが、内心、祈るような気持ちなんですよ(笑)
>「木」の時に抱く感じ方と、「木材」になったときの感じ方はなぜこうも違うのでしょうか。
人間と対峙する存在だった時と、
人間の手に委ねられた存在になった時の違いなのでしょうか??
確かに「木」と「木材」では違いますよね。
染織家でエッセイストで、人間国宝の志村ふくみ先生の文章に
桜で染める話がありました。
ずいぶん前に読んだので、記憶がおぼろげなのですが、
桜の花では染まらず、
花の咲く前の木で染めたら、
見事な桜色に染まったという内容だったと思います。
自然は見えないところでちゃんと春の準備をしているんだなぁと感動しました。
この話も私が木好き(笑)になったきっかけの一つです。
お寺のご子息のお話、すごくいいなぁと思いました。
私もあんな大きな木に座ってみたいです!
たにむらさん、コメントありがとうございます。
私が住む朝倉市に秋月という城下町があります。
そこに桜染めをされる小室さんという方がおられます。
「工房夢細工」
http://www.yumezaiku.com/
開花前の桜の小枝を集め、染料を採取すると聞きました。
ほのかな桃色に染められた桜染は、
春らしいあったかい色合いで、私は大好きです。
ちなみに、秋月は桜並木の名所でもあります。
今日で1月も終わり。
一歩一歩、春が近づいてますね。