2009年 7月 18日
伝承の森
今週は、(株)大喜工務店の切り込み場へと打ち合わせに行ってきました。
大喜工務店は、享保年間に創業、現在は社寺建築を専門とされる老舗で、
現在、福岡市法行寺様の本堂新築工事で協働させていただいております。
この日は、屋根の下地となる部材の打ち合わせでお邪魔いたしました。
社寺の屋根は軒が反り上っています。
そのため、大工さんが設計図より実大の原寸図を書き起こすのです。
今回は、実際にどれくらいの幅の木材が必要なのか、原寸図を採寸してきました。
それにしても壮観です。
広い床一面に合板が敷きこまれ、いたるところに緻密な図面がひしめいているのですから。
この原寸図、何度見てもワクワクします。^^
建てられたものを見れば、錯覚で正方形に見える部材も、
こうして原寸図を見ると菱形であったりして、驚かされるものです。^^
古からの文化が、こうして引き継がれているのだなぁ、としみじみ感じます。
午後より、福岡市にある老舗工務店(株)安恒組にお邪魔しました。
安恒組は明治30年に創業。四代続く老舗です。
(安恒組の安恒社長を紹介した私のブログはこちら)
この写真は安恒組事務所の打ち合わせ用テーブルでして、
部材はなんと松の赤身材・無節の無垢板です。^^
しかも!老舗ならではの物語があります。
もともとこの板は、十日恵比寿神社の床板(とこいた)として使用されていたものです。
大改修の際、役目を終えたため安恒さんが引き取ったとのことでした。
部材となって65年ほど、まだまだ樹齢を考えれば何倍も使えます。
それにしても、これだけの広い松の一枚板がピーンと真直ぐな様は、
凛としいて格好良い!ものです。^^
松はとてもねじれ易い部材なので、この板の裏側には
「蟻桟(ありざん)」という反りを止める加工がしてあります。
蟻桟の歴史は、少なくとも弥生時代中期(約2000年前)からの技術なのだそうで・・・
これまた古の文化に思いを馳せました。
この日、二つの老舗工務店にお邪魔した後より、
民俗学巨匠のこの言葉が脳裏に残響しています。
「人間は伝承の森である。」 宮本常一
お寺の新築工事に携わるなんて、すごいですね。
先日行った、上賀茂神社の屋根のふき替え、職人がすくなり、また、費用がなく苦労していると神主さんが言っていました。
文化の伝承は大変なことですね。
立派なテーブルですね。
これをお客様の目に触れる打ち合わせテーブルに利用されるとは、老舗工務店のこだわりなのでしょうね。
#居間や客間ではなく打ち合わせテーブルというところが、カッコイイです。
十日恵比寿神社の床板として使用されていたものとはまた、いい知恵が頂けそうですね。
テーブルの話題から、松の性質、反りを止める加工について、古の文化について…話は尽きないことでしょうね。
こういうテーブルいいですね!
ウイスキーの樽に使われる木も上質な素晴らしいものなので、
それを使ったテーブルが商品になっていますね。
非常に重たいそうですが。
木材の素晴らしい面はたくさんありますが、
ひとつのお役目を終えても、そこで終わらないところも
とても素晴らしいですよね。
古民家を改築した場合も、古い柱などをカウンターなどに
使う例がありますね。
人間が使う場を考えれば木はいくらでも活躍してくれるんですねー
大工さんは図面も書くのですね。
オールマイティーでないといけませんね。
箱根駅伝の優勝カップの記事ありがとうございます。
こんなドラマがあったなんて知りませんでした。
落合さま
いつもありがとうございます♪^^
落合さんとのシンクロニシティがあった上賀茂神社の屋根は
檜皮葺き(ひわだぶき)↓のようですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AA%9C%E7%9A%AE%E8%91%BA
檜皮葺きは、大変格調高く美しい屋根だと思いますが、
神主さんが仰るように、今や材料的にも技術的にも、
希少な葺き方の為、想像を超える予算がかかるようです。
上賀茂神社の屋根の葺き替えの予算は20億円ほどのようです。
ちなみに、昨年訪ねた日本一大きい本殿がある出雲大社の
屋根の葺き替え(檜皮葺)工事の予算は、
80億円とお伺いしたように記憶しています。
茅や木の皮を使った屋根が
日本からほとんど姿を消してしまったために
原材料を集めるのも、職人を寄せるのも大変で、
このような予算となってしまうのでしょう。
屋根の文化の伝承という点では、社寺や文化財の民家はまさに
最後の砦と言ってよいのではないでしょうか。
深山さま
ほんとに立派なテーブルでした。
見た目も良かけど縁起が良かでしょ?^^
話は変わりますが、最近、初対面でもブログ読んでます、
とフレンドリーに話しかけてくださる方が増えてきました。
どちらでHP作成されたのかも尋ねられますよ。^^
うれしいですね~
いつもありがとうございます。
Dream Writerさま
ウィスキー樽には、オーク材(広葉樹)が使用されます。
硬くて重い木です。
これは柾目を使用します。
一方、日本酒などの樽は杉材(針葉樹)を使用します。
杉は柔らかくて軽い木です。
この場合は板目を使用します。
使用する木材の違いは、
その地域の植生の差とも言えますが、
ここで面白いのは柾目と板目の違いです。
これは、木の中で水が通る管
(広葉樹=導管・針葉樹=仮導管)の
構造的な違いから生じます。
ちなみに日本の場合、杉(針葉樹)をつかって
樽は板目で、桶は柾目でつくります。
なぜ樽が板目かというと、水分が満たされた状態が常であるからです。
板目は、水を含むと膨張し、結果隙間ができにくくなります。
では一方、桶はどうして柾目なのか。
これは、水をすくうときだけ使用し、
いつもは乾燥している状態が常であるからです。
そのため、膨張や収縮しにくい柾目取りの板でつくるのです。
話ははじめに戻りますが、
オーク材は広葉樹なので導管というものがあます。
もしもオーク材の樽を板目でつくったら、
導管から水分が染み出すような構造となってしまいます。
針葉樹には導管がないので、
樽・桶といった使い分けができるのです。
ショコリン
そもそも昔の家には今のような設計図書はありませんでした。
しかしながら、図面的なものがなかったかというとそんなことはありません。
大工さんは図板↓というものを書いていました。
http://k-kaneko.life.coocan.jp/blog3/2009/03/post-146.html
この図板には、柱をどこに建てるかの点があり、
縦方向に「い・ろ・は・・・」横方向に「一・二・三・・・」と座標を作り
柱の場所と向きを特定していくのです。
「いの一番」は大工用語に由来しているとも言われています。
この図板用の板に、原寸図を描き込んだものが写真の図と言えます。
たしかに・・・
大工さんになるには、本当にいろんな修行が必要なようですね。^^
杉岡さんはいつも自然に囲まれてていいですよね(^^
うらやましい限りです。
それと、
「人間は伝承の森である。」
う~ん。奥深い言葉ですね(^^
取次さま
たしかに良くも悪くも身の回りは緑だらけですね~(笑)
ところが!家の中はそうでもありません。
現在私は築2年のマンションに住んでいます。
ということで、いかにこの無機質な空間に
無垢材を取り入れ快適に過ごせるか、
いろいろと思案、試作中なのです。
取次さんのように品川に暮らしながら
自然に囲まれているような味わいを
どうすれば得られるか、考えてみたいと思っています。^^